どうしてお米の値段が高くなったのか?

資料
どうしてお米の値段が高くなったのか?

お米の価格高騰については、各種メディアで様々な要因が報道されていますが、ここでは客観的データに基づき、その実態を検証いたします。

まず、資料1(1)「相対取引価格の推移(全銘柄平均)」によれば、米価は令和6年8月から急騰しております。これは、同月8日に発生した日向灘を震源とする最大震度6弱の地震を受けて、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発令された影響と考えられます。多くの家庭で非常時への備蓄として米の購入が急増した結果、品薄感が強まり、価格上昇を招いたと推察されます。

次に、資料1(2)「主食用米等の需給見通し」によれば、政府は長年にわたり米価の安定を図るため、需給バランスを調整する減反政策を実施してきました。しかし、令和4年・5年産米は猛暑による品質低下の影響を受け、生産量が需要量に対して約42万トンも不足する結果となりました。

さらに、資料1(3)「民間流通在庫の推移」では、令和6年6月末の在庫量が153万トンと、適正とされる200万トンに比べて約47万トンも下回っており、深刻な品薄状態が明らかです。

一方で、資料1(4)「政府備蓄米の在庫状況」によれば、令和6年6月末時点で91万トンの備蓄米が存在し、政府は米価安定のために段階的な放出を行っています。

資料2(5)「青森県産米主要銘柄の概算金の推移」では、業務用米「まっしぐら」の価格が、令和3年度には60kgあたり8,000円と、生産費(1アールあたり約11,461円)を大きく下回り、農家の採算を圧迫していたことが分かります。しかし、令和6年産米では概算金が22,000円と大幅に回復し、ようやく生産コストに見合う水準に達しました。

加えて、資料2(6)「年別訪日外国人数の推移」に注目すると、業務用米「まっしぐら」の価格動向と訪日外国人数の増減が一致しており、外食・中食業界を中心とするインバウンド需要の回復が、業務用米の消費拡大に大きく寄与していると考えられます。

また、資料2(7)「青森県産米の月別小売価格(POSデータ)」によれば、令和6年7月から10月にかけて、小売価格が大きく上昇しており、資料2(8)「月別販売数量」では、令和6年9月に販売数量が急減。これは需給逼迫による価格高騰と、実際の店頭での品薄を裏付けるデータとなっています。

以上のことから、米価高騰の要因は、以下のように整理できます。

  1. 猛暑等による令和4・5年産米の品質低下と生産量減少(42万トン減)。

  2. 南海トラフ地震臨時情報の発令による買い急ぎ。

  3. インバウンド回復による業務用米需要の増加。

  4. 民間在庫の大幅減少(47万トン不足)。

  5. 小売価格の上昇と販売数量の減少による供給ひっ迫の表面化。

現在は政府による備蓄米の放出などにより市場在庫の回復が進み、米価は落ち着きを見せつつあります。しかしながら、メディア報道の増加を背景に、お米への関心が一層高まり、消費量の底上げも見込まれることから、当面は米価が高止まりする可能性も否定できません。

以上、客観的資料に基づいて分析した結果、今回の米価上昇は、自然・経済・社会的要因が複合的に重なった“需給構造のゆがみ”によるものと結論づけられます。

資料:第8期(令和6年度)通常総会配布資料(葛西勇人)20250222

タイトルとURLをコピーしました