1 概要
令和8年2月26日、秋田県山本郡藤里町に所在する「特定非営利活動法人ふじさと元気塾」を訪問し、農村RMO(農村型地域運営組織)の実践事例について調査した。対応いただいたのは理事長の藤原弘章氏およびコーディネイターの小山弘貴氏である。本研修は、当地区における農村RMO立上げの可能性を探ることを目的として実施したものである。
まず、最も印象的であったのは、組織構造の明確な役割分担である。同団体では、地域の意思決定を担う「ふじさと粕毛地域活性化協議会」と、実務執行を担うNPO法人という二層構造を採用している。協議会は地域住民や各種団体が参画する合意形成機関であり、事業方針や活動内容を決定する。一方、NPO法人は補助金申請、会計処理、労務管理、行政との折衝などを専門的に担っている。この「意思決定」と「実務」の分離が、制度変更や補助要件の変化に柔軟に対応できる体制を生み、17年間にわたる継続運営を可能にしているとの説明であった。
次に財源構造についてである。同団体は補助金に依存し切るのではなく、自主事業、行政受託事業、外部支援を組み合わせた多層型の収益モデルを構築している。自主事業としては養殖事業が主軸であり、年間約700万円の売上を確保している。また、農家民宿の手数料収入なども安定的な収益源となっている。加えて、町からの移住定住支援事業や木の駅事業などの受託収入も確保している。さらに全国に49人のサポーター会員を有し、会費収入を得ている点も特徴的である。小規模な収益を積み重ねることで人件費を賄い、経営の安定を図るという発想は、極めて実践的であると感じた。
補助金活用の考え方についても学びが大きかった。基盤形成期には草刈りや多面的機能支払交付金等を活用し、組織体制を整備する。その後、農村RMO実証事業や山村活性化対策事業など比較的大型の補助事業へと段階的に発展させている。実績を積み重ね、それを根拠として次の補助事業へとつなげる循環型の発想が重要であるとのことであった。制度の性格や重複可否を十分に理解したうえで戦略的に活用する姿勢は、今後の取り組みにおいて不可欠である。
人件費設計の考え方も現実的である。同団体では常勤職員の大規模雇用を前提とせず、時給制による地域内雇用を基本としている。最低賃金を上回る水準を確保しつつ、持続可能な範囲で雇用を創出している。完全雇用型ではなく、必要な業務に応じて時間単位で対応する仕組みは、人口減少地域における現実的なモデルであると感じた。
また、固定資産を極力保有せず、無借金経営を徹底している点も重要である。機械導入に際しては第三者所有方式を活用し、レンタル契約によって資産リスクを回避している。補助終了後の継続性を常に意識し、3年後も運営可能な体制を構築するという考え方は、国の制度設計の方向性とも合致している。
さらに、外部との連携も積極的に行っている。農林水産省や秋田県、藤里町との連携のみならず、企業や大学とも協働しており、実践的なノウハウの蓄積が図られている。「認定NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク」様の活動内容を参考に、そこからノウハウなどを教えてもらったり、相談にのってもらっているとのことであった。
本研修を通じ、地域づくりは理念や熱意のみでは継続し得ないことを強く認識した。持続可能性を担保するためには、制度理解、役割分担の明確化、収益源の多様化、そして事務局機能の強化が不可欠である。当地区で農村RMOを検討するにあたり、本事例は極めて実践的な先行モデルであり、今後の具体的検討に大いに活かすべき知見であると総括する。
以上、研修の概要および所感を報告する。
2 報告書