1 講演概要
(1)日時
2026年3月5日(木)16:00~17:00
(2)場所
フォルトーナ
(3)講演内容
変革期を迎える日本・東北経済の行方とグローバル投資環境について
(4)講演者
野村アセットマネジメント 鈴木 皓太 様
(5)主催者
公益社団法人弘前法人会
2 目 的
本講演では、日本・東北経済の現状と今後の見通しについて、日本経済が長年続いたデフレ環境からどのように変化しているのかについて理解を深めることを目的とした。また、株式市場の動向と実体経済の関係について学び、今後の日本経済の成長可能性について考察することを目的として参加した。
3 内 容
(1)金融市場の動向
最近の株式市場は、国際情勢や投資家心理の影響を受け、短期的に大きな変動が見られる。例えば中東情勢の緊張などにより株価が一時的に大きく下落する一方、その後急速に反発するなど、不安定な値動きが続いている。
しかしながら、このような短期的な市場変動は必ずしも実体経済を反映したものではなく、投資家心理の影響による部分も大きい。実体経済への影響として注意すべき点は、主として原油価格の動向である。原油価格が上昇すれば企業のコスト増加につながり、日本経済にも影響を及ぼす可能性がある。
ただし過去の例では、地政学的リスクによる原油価格の上昇は比較的短期間で落ち着くケースが多く、現時点では冷静に状況を見極める必要がある。
(2)日本株上昇の背景
近年、日本の株式市場が上昇している背景には、日本経済の構造変化がある。特に重要な指標が名目GDPである。日本の名目GDPは、1990年代以降長らく横ばいの状態が続いていた。これはデフレ環境により物価が上昇せず、経済規模が拡大しにくかったことが要因である。しかし近年はインフレ基調となり、物価の上昇とともに名目GDPが拡大する傾向が見られるようになっている。
経済規模が拡大すれば企業の売上や利益も増加しやすくなるため、株価上昇の要因となる。現在の株価上昇は、バブルなのではなく、こうした経済環境の変化を反映していると考えられる。
(3)企業業績の改善
日本企業の業績は、現在明確な改善傾向にある。インフレ環境においては企業が価格転嫁を行いやすくなるため、売上や利益が増加しやすい状況となっている。
デフレ時代には、売上が伸びないため企業はコスト削減によって利益を確保する経営を行っていた。その結果、株価も上下を繰り返す傾向が強かった。
しかし現在は企業収益が拡大し、多くの企業が過去最高益を更新している。このような企業業績の改善が、日本株上昇の大きな要因となっている。
(4)PER(株価収益率)の変化
株価の水準を判断する指標として、PER(株価収益率)がある。日本株のPERはこれまで概ね12倍、14倍、16倍、18倍程度の範囲で推移してきた。
近年は企業業績の改善を背景として、株価の適正水準そのものが徐々に引き上げられている。すなわちPERのレンジが右肩上がりに上昇しており、株価の評価水準が変化しつつあると考えられる。
このような状況が続けば、日本株は今後も長期的に上昇する可能性があり、毎年おおむね1割程度の上昇が続く可能性も指摘されている。
(5)企業マインドの変化
企業の意識にも大きな変化が見られる。従来のデフレ環境では、売上拡大が難しいことから企業はコスト削減を中心とした経営を行ってきた。
しかし、現在は企業が業績拡大に対して自信を持ち始めており、設備投資の拡大、賃上げの実施、など前向きな経営判断が増えている。
これらは日本経済の成長力を高める要因となり、潜在成長率の向上にもつながると考えられる。
(6)設備投資と経済構造の変化
デフレ期の日本では、企業が設備投資を抑制してきた結果、有形固定資産が減少する傾向が見られた。
しかし、現在はインフレ基調の中で企業の投資意欲が高まり、デジタル化、AI投資、生産設備投資、などが拡大している。
設備投資の増加は生産性の向上につながり、日本経済の成長力を高める要因となる。
(7)企業景況感
企業の景況感は全国的に良好であり、東北地域においても比較的堅調な状況となっている。企業の設備投資計画も堅調であり、企業マインドは前向きな状態であるといえる。
(8)名目GDPと将来展望
政府・与党は、2040年に名目GDP1000兆円を目指す目標を掲げている。現在のインフレ環境を踏まえると、この目標は決して非現実的なものではないと考えられる。
仮に、この水準が達成された場合、企業収益の拡大を背景として、日本の株式市場も大きく成長し、日経平均株価が2040年頃には12万円程度に達する可能性もあるとの見方が示されている。
(9)実感なき株高の要因
株価が上昇しているにもかかわらず、国民の生活実感として景気回復が感じにくい理由として、実質GDPが横ばいであることが挙げられる。
実質GDPは名目GDPから物価上昇の影響を差し引いた指標であり、現在は物価上昇の影響により家計の購買力が低下している。その結果、消費者は節約志向を強め、メリハリのある消費行動が広がっている。
(10)金利動向
日本の金利は現在、正常化の過程にある。政策金利の引き上げや国債利回りの上昇が見られるものの、現時点では「金利 < 経済成長率」という状況が維持されているため、経済への大きな悪影響は生じていないと考えられる。
(11)世界経済と資金環境
世界経済は全体として安定成長が見込まれている。また世界的に資金供給が多く、いわゆる「金余り」の状態が続いている。
その結果、余剰資金は株式や金などのリスク資産に流入し、資産価格の上昇要因となっている。
(12)為替とデジタル赤字
通常、米国が利下げを行い日本が利上げを行えば円高が進みやすい。しかし現在は円高が進みにくい状況となっている。
その理由として、日本の実質政策金利が大幅なマイナスであること、デジタル赤字の拡大が挙げられる。
デジタル赤字とは、日本が海外のデジタル関連サービスに支払う金額が、海外から受け取る金額を上回る状態を指す。クラウドサービスやソフトウェア利用料などの支払いが増加していることから、海外への資金流出が進み、円安要因となっている。
4 所 感
本講演を通じ、日本経済は長年続いたデフレ環境からインフレ基調へと移行しつつあり、企業業績の改善や設備投資の拡大などを背景として経済構造の転換が進んでいる可能性があることを学んだ。
また、企業の設備投資や賃上げが継続すれば、日本経済の成長力は高まり、名目GDPの拡大や株式市場の成長にもつながると考えられる。
一方で、物価上昇による家計負担の増加や為替の不安定要因なども存在しており、今後の経済動向については引き続き注視していく必要がある。
今回得られた知見を踏まえ、日本経済の構造変化を正しく理解し、地域経済の発展に向けた政策の検討に活かしていくことが重要であると考える。